更新日:2025.06.26
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電子帳簿保存法への対応を進める際、「どのようなフォルダ構成にすればよいのか」という疑問を抱えている事業者は少なくありません。請求書や領収書などの電子データが増え続けるなかで、適切な管理体制の構築は急務といえます。
フォルダ構成を考える上では、法的要件を満たすことはもちろん、日々の業務で実際に運用できる仕組みづくりが欠かせません。明瞭なフォルダ構成にすることで、税務調査時の対応もスムーズにおこなえます。
本記事では、電子帳簿保存法に対応したフォルダ構成について、具体例や実務で活用できる運用のコツを解説します。
電子帳簿保存法では、フォルダ構成の厳格な要件は定められていません。
国税庁の見解でも、「複数フォルダへの分散は差し支えないが、出力する際にすぐに提示できるよう管理する必要がある」とされています(※)。つまり、法令上は特定のフォルダ構成を強制されることはありません。
ただし、実務上は「整然とした形式で速やかに出力できる状態」を実現するために、検索性と利便性を重視した構成が推奨されています。
とくに重要なのは、階層を3階層程度に抑えて、社内業務にあった分類単位で整理することです。階層が深すぎると日常の保存作業が煩雑になり、かえって運用の妨げになってしまいます。
(※)参考:国税庁 電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】問28
電子帳簿保存法では、書類の検索性を高めるために、ファイル名に一定のルールを設けることが重要です。「取引年月日」「取引金額」「取引先名」の3つの項目で検索できる状態にする必要があるため、これらの情報を含んだ体系的な管理が求められます。
フォルダ構成は企業規模や業務内容ごとに最適な形が異なるため、自社の実情にあわせた選択がポイントです。年間の取引件数、取引先の数、書類の種類などを考慮して、効率的に管理できる構成を採用しましょう。
ここでは、実務でよく使われるフォルダ構成とファイル名のわけ方について解説します。
年度を最上位に置くこの構成は、決算単位での確認や監査対応に便利な方法です。たとえば「2025年度」フォルダの下に「請求書」「領収書」といった書類種別フォルダを作り、さらにその下に取引先別のフォルダを配置します。
書類の種類ごとに分類されているため、特定の帳票を横断的に確認する際の検索性の確保が可能です。年度ごとの保存期限管理も容易で、法定保存期間が経過した書類の整理もスムーズにおこなえます。
ただし、取引先が多数ある業種では、下位フォルダが煩雑になる可能性があります。この場合は、主要取引先とそのほかにわけるなど、さらなる工夫が必要になるでしょう。
書類の種類を最上位に配置するこの構成は、スキャンや保存、確認などの毎月の作業フローに合わせやすいのが特徴です。「請求書」フォルダの下に「2024年」フォルダを作り、さらに「01月」「02月」と月別に分類します。
書類種別ごとにまとまっているため、特定の帳票を探しやすく、経理業務の効率化につながります。月次決算や定期的な書類確認作業にも適しており、日常業務との親和性が高い構成です。
一方で、書類種別の分類が曖昧だと運用が煩雑になりがちです。たとえば、請求書兼領収書のような複合的な書類をどこに保存するか、事前に明確なルールを定めておく必要があります。
取引先を最上位に置くこの構成は、取引先ごとに書類が整理されているため、特定の取引先に関する書類の迅速な確認が可能です。「A社」フォルダの下に「請求書」「領収書」などの書類種別フォルダを作り、さらに年度別に分類します。
取引先との関係性や取引履歴を把握しやすく、営業活動や契約管理にも役立ちます。顧客対応の際に過去の取引内容を素早く確認できるため、カスタマーサービスの向上も図れるでしょう。
ただし、取引先の数が多い場合、フォルダ数が増加し、管理が煩雑になる可能性があります。新規取引先が増えるたびにフォルダを作成する必要があるため、運用ルールの徹底が大切です。
電子帳簿保存法に対応したフォルダ構成は、法令上の要件を満たすことを前提に「誰が見てもわかりやすく」、「あとから必要な情報を確実に探し出せる」ように整備する必要があります。
フォルダを管理する際には単に法律を守るだけではなく、実務で継続的に運用できる仕組みづくりが重要です。
ここでは、フォルダ管理を効果的に運用するための3つのコツについて解説します。
電子帳簿保存法では、保存した電子データを「整然と明瞭に速やかに出力できる」状態にすることが求められています。フォルダ・ファイルの分類は、税務調査などで書類の提示を求められた際に、迅速に対応できるよう整理しておくことが重要です。
適切なフォルダ構成は、システムの検索機能を補完する役割も果たします。たとえば、年度別・取引先別にフォルダをわけておけば、検索範囲を絞り込みやすくなり、必要な書類へのアクセス時間の大幅な短縮が可能です。
フォルダの分類単位は、「年度」「取引先」「書類の種類」「業務部門」など、自社の業務や帳票の性質に応じて決定します。重要なのは、社内の誰もが理解できる明確な分類基準を設けることです。
たとえば、年度や年月で大分類し、その下位に取引先名や部門名を配置し、さらに請求書・領収書・見積書など書類種別で細分化する方法があります。この際、同じレベルの分類では統一した基準を用いることで、フォルダ構成全体の一貫性を保てます。
フォルダ名・ファイル名は一貫した設定ルールを設け、誰が見ても意味がわかるようにつけることが大切です。とくにファイル名には法律で求められる「取引年月日・取引金額・取引先名」の項目を含める必要があります。
たとえば「20250530_A社_50000_請求書.pdf」のように、決められた順序と形式で統一します。社内ルールを文書化し、関係者間で共有・遵守することで、属人化を防ぎ、誰でも同じ品質で管理できる体制の構築が可能です。
電子帳簿保存法への対応は多くの企業にとって課題ですが、適切なシステムやサービスの利用で、複雑なフォルダ構成の管理を大幅に簡素化できます。手作業での分類やファイル名の設定作業から解放されて、法令要件を満たしながら業務効率の向上が可能です。
電子帳簿保存法対応システムの導入で、以下のようなメリットが得られます。
システム導入を検討する際は、複数のサービスを比較検討し、自社の業務フローにあった機能を持つものを選ぶことが重要です。初期費用だけではなく、運用コストや操作性、サポート体制なども含めて総合的に判断しましょう。
本記事では、電子帳簿保存法に対応したフォルダ構成の具体例と、実務で活用できる運用のコツについて解説しました。
電子帳簿保存法に対応したフォルダ構成は、検索性・可視性の確保だけではなく、業務の効率化にも大きく貢献します。年度別・書類種別・取引先別など、自社の業務にあった分類方法を選択し、統一されたルールでの運用が成功の鍵です。
法令の要件を理解しつつ、実際に運用できる構成を目指すことが大切です。必要に応じて電子帳簿保存法対応システムの導入も検討し「見やすく」「探しやすい」環境を整えることで、電子帳簿保存法への対応を確実なものにしていきましょう。