更新日:2025.06.26
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電子帳簿保存法は、2022年1月1日に大幅な改正が実施されました。また、2024年の法改正によって電子帳簿保存法は本格施行され、電子取引における電子データの保存が義務化されています。
電子帳簿保存法は書類を電子データとして保存するための法律であり、複雑なルールが定められています。そのため、電子帳簿保存法の対象となる取引をおこなう事業者は、法令の変更点を理解したうえで対応しなければなりません。
本記事では、電子帳簿保存法の改正施行について保存区分や2022年1月以降の変更点、法改正に対応するためのポイントを交えて解説します。
電子帳簿保存法はこれまでに何度も法改正が実施されており、直近の改正施行は2024年1月1日です。
この改正では、「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引」の3区分ともに保存要件や罰則に変更がくわえられました。変更点の詳細は以下のとおりです。
区分 |
変更点 |
電子帳簿等保存 |
「優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置」の対象となる帳簿範囲が見直された |
スキャナ保存 |
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電子取引 |
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電子帳簿保存法では、紙の書類を電子データとして保存するためのルールを定めています。
1998年の制定以降、時代の変化にあわせて何度も改正がおこなわれてきました。2022年に大きな改正が施行され、2024年以降は電子取引における電子データの保存が義務化されています。
電子帳簿保存法は時代にあわせた改正を繰り返した結果、現在の保存区分は3種類です。保存区分ごとに取り扱う書類が異なるため、どの書類がどの区分に該当するかを把握しましょう。
ここでは、電子帳簿保存法における3種類の保存区分を解説します。
保存が必要な帳簿・書類をパソコンなどで作成した場合、紙に印刷せずにデータのまま保存することが可能です。
電子データとして保存できる帳簿・書類の例には以下があります。
また、会計ソフトで作成した帳簿をデータ保存するためには、以下の要件を満たす必要があります。
ただし、データ保存できる帳簿は、複式簿記で作成されたものに限ります。
紙で受領した領収書や請求書などは、スマートフォンやスキャナで読み取った電子データの保存が可能です。
スキャナ保存の対象となる書類の例は以下のとおりです。
スキャナ保存に対応することで、書類の保管スペースが不要となります。また、書類の受け渡しから保存までを電子データのみでおこなえるため、テレワークを推進しやすくなる点もメリットです。
メールやダウンロードによって受領した電子データは、紙に印刷せずにそのまま保存しなければなりません。
電子データ保存の対象となる書類の例は以下のとおりです。
また、電子取引のデータ保存には以下3つのルールが存在します。
なお、紙で受領した請求書や領収書などの書類は、そのまま保存して問題ありません。
電子帳簿保存法はこれまでに何度も改正がおこなわれ、その度に内容が変更されてきました。
とくに、2022年1月の法改正では大幅な変更があったため、内容を把握しておくことが重要です。改正内容を把握していれば、必要に応じて適切な対応がおこなえます。
ここでは、電子帳簿保存法における2022年1月以降の変更点を解説します。
法改正前は電子帳簿等保存やスキャナ保存を希望する場合、事前に税務署長の承認を受ける必要がありました。
しかし、電子帳簿保存法の改正によって、2022年1月1日以降は事前承認が不要です。そのため、事業者の準備が整った段階で、電子帳簿等保存やスキャナ保存に対応できます。
法改正前は、電子取引で受領した電子データを紙に印刷して保存することが認められていました。
しかし、電子帳簿保存法が改正されたことで、現在は電子取引における電子データをそのまま保存しなければなりません。また、電子データを保存する際には、データの真実性の要件と可視性の要件を満たすことも必要です。
帳簿や書類を電子データとして保存するためには、複数の要件を満たさなければならず、要件の内容は複雑でした。
しかし、2022年1月1日の法改正以降は、保存要件が大幅に緩和されています。そのため、現在は以下3つの要件を満たすことで、電子データの保存が可能です。
電子帳簿保存法に対応している事業者は、保存要件を改めて確認しておきましょう。
法改正前は、スキャナ保存のタイムスタンプ付与期間が「3営業日以内」でした。
しかし、2022年1月1日以降は「最長2か月と概ね7営業日以内」に変更されています。また、クラウドサービスを利用しており、訂正削除の履歴が残る場合はタイムスタンプの付与を省略することが可能です。
電子帳簿保存法では不正がおこなわれた場合に罰則が科せられますが、2022年1月1日以降はその罰則が強化されました。
たとえば、スキャナ保存や電子取引において隠蔽や改ざんがあった場合、申告漏れに対する重加算税が10%加算されます。
なお、電子帳簿等保存に関しては、優良な電子帳簿の要件を満たす事業者で申告漏れがあった場合には、過少申告加算税が5%軽減されます。ただし、事前に管轄の税務署に措置の適用を受ける旨の届出を提出しており、隠蔽や改ざんがないことが条件です。
電子帳簿保存法の改正に対応する際には、少なからず業務への影響があります。企業の状況によっては、業務効率が低下する可能性があるため注意しなければなりません。
しかし、事前に対応する際のポイントを把握していれば、業務への影響を最小限にとどめることが可能です。ポイントをしっかりおさえて、法改正に対応する準備を進めましょう。
ここでは、電子帳簿保存法の改正に対応するための3つのポイントを解説します。
事業規模によって、電子化すべき書類の量が異なります。規模が大きくなるほど書類の量が膨大になるため、まずは現状を把握してどの書類から電子化するかの優先順位をつけましょう。
この際には、コスト削減や業務効率化につながるもの、または電子化しやすいものを優先することがおすすめです。
すべての書類を手作業で電子化すると、膨大な手間や時間がかかります。しかし、自社の状況に応じたシステムを活用することで、効率的に電子帳簿保存法の改正に対応可能です。
たとえば、請求書や領収書を電子化する場合は、作成・発行を自動化できるシステムを選びましょう。受領した書類の管理を効率化したいなら、請求書受領システムがおすすめです。
また、システムを選ぶ際には、コストや拡張性などを含めてしっかり比較検討してください。
電子帳簿保存法の改正に対応するためには、今までの業務フローを見直さなければならないケースがあります。
たとえば、法改正後は活用するシステムに編集履歴が残るかどうかで、タイムスタンプの要否が異なります。システムの機能によって運用ルールを新しく定めるなかで、不要となる業務も出てくるはずです。
また、新しいシステムを導入する場合は、アクセス権限を制限してセキュリティ性を担保する必要があります。業務フローの見直しとあわせて、運用ルールも整備しましょう。
本記事では、電子帳簿保存法の改正施行について保存区分や2022年1月以降の変更点、法改正に対応するためのポイントを交えて解説しました。
電子帳簿保存法はこれまでに何度も改正されており、2022年1月1日には大幅な改正が実施されました。
また、2024年1月1日の改正では、電子取引における電子データ保存が義務化されたため、従来のようにメールやダウンロードで受領した書類を紙に印刷して保存することはできません。
電子帳簿保存法は今後も時代にあわせて改正を重ねると考えられます。電子帳簿保存法の改正に対応するためには、その都度変更点を把握したうえで各事業者が準備を整えることが重要です。