更新日:2025.06.30
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電子帳簿保存法は、請求書や領収書などの国税関係書類を電子データで保存する際の法律です。2024年1月の改正により電子取引によるデータ保存が義務化されました。
そのため、今後、電子帳簿保存法の要件を満たさない形で電子保存をすると、罰則の対象となりかねないため、対象の事業者は要件を満たす必要があります。
しかし、自社が電子帳簿保存法の対象なのか判断できず、対応を迷う事業者も少なくありません。適切に国税関係書類の保存に対応するためにも、まずは電子帳簿保存法の対象者について把握しておくことが重要です。
本記事では、電子帳簿保存法の対象者について、対象外のケースや対応方法などを交えつつ解説します。
電子帳簿保存法は、所得税や法人税を支払っているすべての事業者が対象となります。業種や事業の規模は関係ないため、事業者や経理関係の担当者は電子帳簿保存法について深く理解しておくことが大切です。
なお、事業者は電子帳簿保存法を守らず書類の保存や管理をおこなうと、何らかの罰則が科される可能性があります。青色申告の取り消しや追徴課税など、罰則の内容は事業に大きく影響しかねません。
保存方法ごとに要件が定められているため、電子帳簿保存法に該当する事業者は、要件を満たす保存環境を整える必要があります。
電子帳簿保存法は、すべての事業者が該当するものの、特定の状況や保存環境によっては対象外となるケースもあります。
書類のすべてを電子データで保存するわけではないため、例外のケースをおさえて正しく保存や保管をすることが大切です。
ここでは、電子帳簿保存法が対象外となるケースを2つ解説します。
電子帳簿保存法は、電子的に作成した書類に適用されるルールです。そのため、はじめから紙を用いて書類を送付や受領している場合は、電子帳簿保存法に該当しません。
ただし、スキャナ保存を活用して紙の書類を電子化する場合は、電子帳簿保存法の要件を満たす必要があります。
紙と電子データのどちらを選ぶかは任意のため、自社の保存環境や社内ルールにもとづき対処しましょう。
2024年から実施されている「猶予措置」に該当すると、電子帳簿保存法の要件を満たせない場合であっても電子データでの保存が一部認められています。猶予措置については、所轄の税務署長が「相当の理由」であると認めた場合にのみ適用されます。
ただし、猶予措置が認められた場合であっても電子データとして保存し、必要に応じてダウンロードできるようにしておかなければいけません。
また、税務調査の際は「相当の理由」に該当している説明が必要なため、状況に応じて書類で証明できるように準備しておきましょう。
電子帳簿保存法においては電子保存の形式が3方式あり、書類の種類や取引先とやり取りする方法によって使い分けなければいけません。また、電子保存の形式によっては電子帳簿保存法での対応が任意の場合もあるため、正しく対応するためにも形式ごとに決まりをおさえておく必要があります。
ここでは、電子帳簿保存法に対応する方法を3つ解説します。
電子帳簿等保存は、会計ソフトなどで作成した国税関係帳簿書類をそのまま電子保存する方式です。対象の書類については、国税関係帳簿と決算関係書類、取引関係書類の3種類になります。
国税関係帳簿 |
仕訳帳 総勘定元帳 現金出納帳など |
決算関係書類 |
貸借対照表 損益計算書 棚卸表など |
取引関係書類 |
領収書 請求書 注文書(発注書)など |
なお、電子データで保存する場合は電子帳簿保存法の要件を満たす必要があります。電子帳簿等保存に該当する書類は会計ソフトを用いて作成するケースが多いため、システムが要件を満たしているか事前確認を忘れないようにしましょう。
スキャナ保存とは、紙の書類を送付や受領した際にスキャナを使用し、電子データとして保存する方法です。
対象の書類に関しては、国税関係書類のうち取引関係の書類が該当します。以下に該当書類を一部まとめているため、参考にしてください。
なお、紙の書類で送付や受領した際は、電子データで保存するかどうかは事業者が決定できます。
電子データとして保存する場合は、電子帳簿保存法の要件を満たせるよう保存環境を整えておかなければいけません。保存時の解像度やタイムスタンプの付与など、細かくルールが設けられているため、事前に確認しておきましょう。
電子取引は、電子データを送受信する際に該当する対応方法です。2024年1月から完全に義務化されており、電子データとして情報を受け取った場合は、電子帳簿保存法の要件を満たした状態で保存しなければいけません。
対象の書類に関しては、メールや電子契約など、Web上で送信や受信した取引関係の書類が該当します。以下に該当書類を一部まとめているため、参考にしてください。
税務関係の法律に違反した際は、罰則が課せられることが一般的です。電子帳簿保存法についても例外ではなく、定められた要件を満たさず電子保存をすると違反になる可能性があります。
電子帳簿保存法の要件を満たすのはもちろん、満たせなかった際にどのようなリスクがあるのか把握しておくためにも、罰則の内容をおさえておきましょう。
ここでは、電子帳簿保存法を遵守しなかった際に考えられる罰則を3つ解説します。
電子帳簿保存法に対応せずに電子データを保存していると、すでに申請が通っている青色申告を取り消されるおそれがあります。
すぐに取り消される可能性は低いものの、違反の内容次第では発覚から短期間で実行されるケースも考えられます。とくに、故意による不正と判断された場合は、即時取り消しとなる可能性が高まるため注意が必要です。
青色申告が取り消されると、税制上の優遇措置が受けられず納税額が増えるため、違反対象とならないように注意しましょう。
電子帳簿保存法について、不正があったとみなされた場合は、追徴課税の対象となる可能性があります。とくに、悪質なデータ改ざんや隠蔽などが税務調査により発覚すると、重加算税の対象となりかねません。
通常時の税額よりも遥かに多い額を納税しなければいけないため、資金面で大きな影響を受けるでしょう。
万が一、書類の保存やデータの内容に誤りを発見した際は、速やかに税務署に報告して適切な対処をすることが大切です。
電子帳簿保存法に関する不正が発覚すると、追徴課税とは別で過料が課せられる可能性があります。
会社法には、重要書類の記録や保存について規定が定められており、違反が認められると100万円以下の過料が課せられる場合があります。悪質な不正と判断されると追徴課税と過料の両方に該当しかねません。
不正に関しては税務調査で明らかにされるため、罰則で不利益を被らないようにするためにも、電子帳簿保存法の要件を満たしたうえで書類を管理しましょう。
本記事では、電子帳簿保存法の対象者について、対象外のケースや対応方法などを交えつつ解説しました。
電子帳簿保存法は、所得税や法人税を納めるすべての事業者が対象となります。そのため、事業を営む以上、電子帳簿保存法に関する知識をおさえ、要件を満たす保存環境を整えておく必要があります。
万が一、電子帳簿保存法の要件を満たせずに電子データを取り扱うと、青色申告の取り消しや追徴課税を課せられるなど、罰則の対象となりかねません。
罰則によるリスクを軽減するためにも、対象事業者は電子帳簿保存法に関する正しい知識を身につけて適切に対応しましょう。