更新日:2025.07.28
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2024年の電子帳簿保存法改正により、電子取引データの保存が義務化され、納品書の発行・保存ルールが大きく変わりました。納品書を電子形式で発行している事業者のなかには、発行側としての保存義務や具体的な対応方法がわからず、法令違反のリスクを抱えている事業者も少なくありません。
電子帳簿保存法への適切な対応をおこなわないと、重加算税の10%加重や青色申告承認取り消しなどの重大なペナルティが科される可能性があります。一方で、発行側の義務や対応方法を正しく理解すれば、法的リスクを回避しながら効率的な発行業務の実現が可能です。
本記事では、電子帳簿保存法における納品書発行側の義務について、法令に適合した保存・管理方法の具体例も交えて解説します。
2024年1月1日から施行された電子帳簿保存法の改正により書類の保存ルールが大きく変わりました。とくに電子取引データの保存義務化は多くの事業者に影響を与えており、納品書にもルールに則った対応が求められています。
このような改正された電子帳簿保存法の法令を知らないまま業務を続けていると、重加算税の10%加重や青色申告の承認取り消しなどの重大なリスクがあるため注意が必要です。
ここでは、納品書に関する電子帳簿保存法の基本ルールについて解説します。
2024年1月1日以降、原則としてすべての事業者は授受した請求書や領収書などに関する電子取引データを、電子データのままで保存しなければならず、従来のように紙に印刷して保存することは認められなくなりました。
具体的には、メールで受け取った請求書やECサイトからダウンロードした領収書、チャットツールで送受信したPDFファイルなどが対象となります。これは納品書も同様で、電子形式で発行・受領した納品書は電子データのまま保存する必要があります。
納品書は、商品やサービスが納品されたことを証明する商習慣上の書類であり、法律で発行が義務づけられているものではありません。しかし、実際に納品書を発行または受領した場合には、税務調査などで取引内容の証明に必要となるため、証憑書類として保存する義務が発生します。
納品書の存在により、実際に商品やサービスの受け渡しがおこなわれたことを客観的に証明できるため、適切な保存が求められています。
納品書は国税関係書類の「取引関係書類」に該当するため、発行した場合は一定期間の保存が必須です。保存期間は事業形態ごとに異なり、法人の場合は原則7年間(赤字決算がある場合は10年間)、個人事業主の場合は基本的に5年間保存する必要があります。
電子化した納品書も同様の保存期間が適用されるため、法令に適合した方法で長期間の保存環境を整備しておくことが重要です。保存期間中に紛失や破損が生じると、税務調査で不利になる可能性があります。
紙の納品書をスキャンする場合には、電子帳簿保存法の「スキャナ保存」の保存区分の要件を満たす必要があります。
「スキャナ保存」のおもな要件は、以下のとおりです。
これらの要件を満たさないスキャンデータは、電子帳簿保存法上の保存要件を満たしていないとみなされる可能性があります。
電子帳簿保存法上、納品書に発行義務そのものはありませんが、発行した際には保存義務が発生します。納品書を発行する際には、電子帳簿保存法上で知っておくべきポイントがいくつかあり、これらを知らずに法令対応をおこなうと、税務調査での指摘やデータ紛失・証拠不備による取引トラブルなどを招くかもしれません。
ここでは、電子帳簿保存法で納品書の発行側が知っておくべき3つのポイントについて解説します。
納品書を紙で発行するか電子取引の形式で発行するかによって、保存義務が異なります。
この保存義務の判断で重要なのは、納品書の「作成形式」ではなく、「授受の方式(どのように相手に届けたか)」が基準となることです。
PDFにしてメール送付やウェブサービスで共有するといった場合は「電子取引」の扱いになり、電子帳簿保存法にもとづいて電子データのまま保存が義務づけられています。一方で、紙で発行した場合は電子帳簿保存法の対象外のため、同法での保存義務はありません。
ただし、税法上の国税関係書類として別途保存義務が発生するため、電子帳簿保存法の対象外であっても保存が必要です。
納品書を電子形式で発行する際には、電子帳簿保存法上の「電子取引」の保存要件である「可視性の確保」と「真実性の確保」を満たさなければなりません。これらの要件を満たさない保存方法では、法令違反とみなされる可能性があります。
保存要件 |
具体的な措置 |
可視性の確保 |
・保存データを確認するためにディスプレイ・プリンタなどを備え付ける |
真実性の確保 |
以下のいずれかの措置をとる |
電子帳簿保存法では、電子取引の保存要件に対して以下のような条件つきの猶予措置が設けられています。
ただし、どちらの場合も共通して、税務調査の際に電子取引データをダウンロード形式で提出できること、「取引年月日」「取引先」ごとに整理された状態でプリントアウトした書面を提示・提出できることが必須です。
これらはあくまでも保存要件の一部を緩和する措置のため、電子取引データの保存義務そのものは免除されません。したがって、データを削除せずに保存し、将来的に法令に対応できるように環境を整えておく必要があります。
電子帳簿保存法に対応したサービス・システムを導入することで、業務効率化やコスト削減などのメリットがあります。手動での対応では、記録漏れや保存要件の不備が生じるリスクがありますが、専用システムの活用で確実な法令対応が可能です。
サービス・システムを導入する際には、企業の業務内容や規模に応じて選ぶことが重要です。また、既存の業務フローとの親和性や、導入・運用コストも考慮して選択しましょう。
ここでは、電子帳簿保存法に対応したおすすめのサービス・システムについて解説します。
OneVoice明細は、納品書や請求書などの帳票類の発行を効率化するためのクラウド型システムです。納品書や請求書、見積書などのさまざまな帳票に対応しており、現在使用している帳票のレイアウトをそのまま使用できるため、スムーズな移行が可能です。
取引先の要望に応じて、メールや郵送、FAXなどの送付方法も選択可能で、柔軟に対応できます。また、導入後最初の2か月間は専任スタッフのサポートがあるため、システムの使い方を安心して学べる環境が整っています。
楽楽明細は、請求書や納品書などの帳票をクラウド上で自動発行できるシステムです。帳票の項目やレイアウトを自由に設定可能で、取引先に自動で送付できるため、手作業による発行業務を大幅に削減できます。
入金管理オプションを利用すれば、銀行から入金データの取込と請求データとの照合を自動化できるため、経理業務全体の効率化を図ることが可能です。
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システムから出力したCSVファイルを瞬時に電子・郵送データに変換できる機能もあり、既存のシステムとの連携もスムーズです。電子帳簿保存法の保存要件を満たした形でのデータ管理が可能で、法令対応も確実におこなえます。
本記事では、電子帳簿保存法における納品書発行側の義務と、法令に適合した保存・管理方法について解説しました。
電子取引で納品書を発行した場合は発行側にも保存義務が発生し、電子データのまま保存することが必須です。納品書を保存する際には、真実性・可視性の確保の要件を満たし、「取引年月日」「金額」「取引先」での検索機能を整備することが重要です。
電子帳簿保存法への適切な対応で法令違反リスクを回避できるだけではなく、納品書発行業務の効率化とコスト削減も実現できます。企業規模や業務内容に適した保存場所・管理方法を選択して、必要に応じて電子帳簿保存法対応システムの導入を検討しましょう。