更新日:2025.06.30
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電子帳簿保存法におけるスキャナ保存では、白黒での保存でも問題ないと考える担当者や個人事業主も少なくありません。しかし、保存する書類の内容によっては、法令上の要件を満たさない場合があります。
電子帳簿保存法では、スキャナ保存に関して満たすべき技術的な要件が細かく定められており、保存形式にも明確な基準があります。とくに、スキャナ保存では「解像度」「階調」「カラー保存」などの要件を満たさなければ、税務調査の際に保存データが正式な証拠として認められず、青色申告の取消しや追徴課税につながる場合があります。
本記事では、電子帳簿保存法におけるカラー保存と白黒保存のどちらがいいのかについて、スキャナ保存の基本的なルールや注意点を交えて解説します。
電子帳簿保存法におけるスキャナ保存では、カラー保存または256階調以上のグレースケール保存が前提とされています。
カラー保存が前提とされているのは、印字や手書き文字の判読性を確保し、書類の改ざんや変更を防ぐためです。白黒スキャンではこれらの判別が難しく、保存要件を満たさないと判断される場合があります。
国税庁のガイドラインでも、解像度200dpi以上・256階調以上の保存形式が明記されています(※)。とくに、請求書や領収書などの重要書類は、帳簿としての証拠力を確保するためにも、カラー保存での対応が基本と考えたほうが良いでしょう。
(※)参考:国税庁「スキャナ保存!」
電子帳簿保存法のスキャナ保存時では、要件を満たしていれば、一般書類については白黒スキャンでの保存も可能です。
ただし、白黒保存が認められるには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
これらの要件を満たさずに白黒保存すると、帳簿書類として認められず、青色申告の取消しや追徴課税につながるおそれがあります。
スキャナ保存とは、紙で受け取った書類を、スキャナやスマートフォンで読み取り、電子データとして保存する方法です。電子帳簿保存法に基づき、データを一定の要件にしたがって管理すれば、原本である紙の書類を破棄しても問題ないとされています。
ただし、要件を正しく理解せずにスキャナ保存をおこなうと、保存データが無効と判断され、帳簿書類として認められない場合があります。認められなければ青色申告の取り消しや追徴課税を受けることもあるため、注意が必要です。
電子帳簿保存法におけるスキャナ保存では、一定の要件を満たしていなければ、保存データは帳簿書類として認められません。要件を正しく理解せずに対応すると、税務調査で否認され、青色申告の取消しや追徴課税の可能性も生じます。
ここでは、スキャナ保存時の要件について、以下を解説します。
真実性の確保では、スキャナ保存されたデータが改ざんされていない正確な情報であることを証明する対応が求められます。代表的な要件は以下のとおりです。
これらを備えていない場合、スキャンデータの信頼性が認められず、帳簿書類として認められない可能性があります。
可視性の確保では、読み取ったデータが明瞭で、必要な情報を速やかに確認できる状態であることが求められます。以下が代表的な要件です。
見読可能性の確保 |
・パソコン、プログラム、ディスプレイ、プリンタ、操作マニュアルを備え付ける |
関連書類の備付け |
・システムの概要書や操作マニュアルなどを備え付ける |
検索機能の確保 |
・取引年月日、取引金額、取引先で検索できる ・日付や金額は範囲指定で検索できる ・複数項目の組み合わせ検索ができる |
保存形式が不適切で画像が不鮮明だったり、検索機能が整備されていなかったりすると、帳簿としての保存要件を満たさず、税務調査で否認される場合もあります。
電子帳簿保存法のスキャナ保存は、紙の書類を電子化して保管できる制度ですが、保存上の要件が詳細に定められています。正しく対応しなければ、保存データが帳簿書類として認められず、税務調査で否認される場合もあります。
ここでは、スキャナ保存をおこなう際の3つの注意点を解説します。
スキャナ保存では、解像度やカラー情報、訂正・削除履歴などの要件が細かく定められています。これらの基準は、スキャン画像を紙の原本と同様に正確かつ信頼性の高い状態で保存することを目的としています。
とくに注意したいのが以下の点です。
スキャン画像が不鮮明であったり、履歴が残らなかったりすると、改ざんや情報不足と判断され、帳簿として無効とされる可能性があります。
スキャナ保存では、保存した書類がすぐに検索・閲覧できる体制であることが求められます。とくに、以下のような検索要件を満たしていないケースは注意が必要です。
このような場合は、検索性が確保されていないと判断され、帳簿書類として不備と判断される場合があります。
スキャナ保存において、電子帳簿保存法では保存時のファイル形式の指定はありません。ただ、基本的には以下のように考えられています。
保存形式がバラバラや、キャプチャ画像に必要な情報がない場合は、保存要件を満たさない可能性があるため、注意しましょう。
本記事では、電子帳簿保存法におけるカラー保存と白黒保存のどちらがいいのかについて、スキャナ保存の基本的なルールや注意点を交えて解説しました。
電子帳簿保存法におけるスキャナ保存では、カラーまたは256階調以上のグレースケール保存が推奨されており、白黒スキャンは原則として認められていません。ただし、見積書や注文書などの一般書類については、要件を満たしていれば白黒保存も可能です。
このため、保存する書類の種類に応じて、形式を使い分けることが重要となります。白黒保存をおこなう場合は、解像度や検索機能、訂正履歴の管理といった要件を正しく理解し、運用しましょう。