更新日:2024.07.31
ー 目次 ー
電子帳簿保存法の改正により、2024年1月から請求書の電子保存が義務付けられました。
これまで請求書などの帳簿を紙で保管していた事業者にとって、電子保存の方法や注意点、改正点など対応すべき内容が多く、頭を悩ませているのではないでしょうか。
本記事では、電子帳簿保存法に対応した請求書の電子保存を適切に行えるように、具体的な方法や注意点を詳しく解説します。
▼この記事でわかること
これまで帳簿を紙で保管していた方や、独立したての起業家・個人事業主の方はぜひ最後までご覧ください。
電子帳簿保存法とは、その名の通り請求書などの帳簿を電子データのまま保管することを認めた法律です。
請求書などの帳票書類は、改ざんされないよう原本の保管・保存が原則とされており、これまでは、電子ファイルではなく紙での保管が基本とされてきました。
しかし、法律の改正により2022年1月以降に電子取引されたデータは全て電子データのまま保管しておかなければいけなくなったのです。
ただし、準備期間として2年間の猶予を設定し、2023年12月末までは紙での保管でも問題ないことになっています。
前述した通り、電子帳簿保存法の改正により2022年1月以降に電子取引されたデータは電子データのまま保管することが義務付けられました。
2023年12月末までは猶予として紙での保管でも認められましたが、2024年1月からは必須事項となっています。
これまでずっと紙で対応してきていて、電子データの保管に慣れていないという方は急いで準備を進めましょう。
電子帳簿保存法では、電子データのまま保存することが義務付けられています。
スキャナ保存は手間がかかり、要件も厳しいため電子データでの保存が効率的です。
請求書などの書類を紙でやり取りするのはやめて、始めから電子データでの取引を行うことをおすすめします。
ここからは、はじめから電子データのまま取引する場合と、紙で取引したものをスキャナ保存する場合のメリットとデメリットについて説明します。
まずは、はじめから電子データで取引する場合です。
電子データでの保管は、検索性が高い、保管スペースが不要、原本紛失のリスクが少ないといったメリットがあります。
一方で、システム導入費用がかかる場合もあり、電子データの形式によっては対応できない場合があるといったデメリットもありますが、電子取引したデータは必ず電子データのまま保管しなければならないため、電子データの保存はいつでも対応できるようにしておきましょう。
電子上でやりとりできるものをわざわざ紙にする必要はありません。電子取引を柔軟に対応できるよう準備しておくことが大切です。
電子取引ではなく、紙で取引を行った場合は紙のまま保管するか、スキャナーでスキャンして電子データ化する方法があります。
既存の紙の請求書を電子化できるため、検索できるようになる、保管スペースを削減できるなどといったメリットはありますが、2024年1月以降は税務署への事前申請が必要になるため非常に手間がかかります。
また、電子帳簿保存法の要件を満たす必要があるため簡単には対応できません。
できるだけ取引は初めから電子上で行い、電子データのまま保管できるようにしておきましょう。
請求書を電子データで保管するには、「真実性」と「可視性」を確保しなければなりません。
ここからは、電子データとして保管する際に注意すべき真実性の確保と可視性の確保についてご説明します。
まずは、真実性の確保についてです。
「真実性の確保」とは、電子データにおいて訂正や削除が行われていないことを証明するための要件です。
電子帳簿保存法が改正され、電子取引データの真実性を確保するために以下の条件を満たすことが求められました。
上記方法のいずれかを選択し、真実性の確保を行うようにしましょう。
電子帳簿保存法の改正によって定められた「可視性の確保」とは、電子取引の情報を必要に応じていつでも確認できる状態で保存するためのものです。
可視性の要件では、「継続性の確保」と「検索機能の確保」を確保しなければなりません。
保存された電子取引の情報は、必要に応じ容易に閲覧できる状態で保存されなければなりません。パソコンなどの電子計算機やディスプレイ、プリンターを操作説明書と一緒に整然とした形で備え付けておくことが必要です。
また、システム概要書やシステム基本設計書などの書類を備え付けておくことも求められます。
取引の日付や金額、取引先名などを検索できるように、検索機能を確保しておく必要があります。規則的なファイル名をつける、Excelなどのシステムで索引簿を作成して検索に対応する、検索要件に対応したシステムを利用することを心がけましょう。
電子帳簿保存法の要件は、一部ケースバイケースで対応が異なる場合があります。時と場合によって要件が異なりますので、事前に把握しておくようにしましょう。
ここからは、以下の3つの観点についてご説明します。
▼請求書を保管する際にケースバイケースとなる要件
それでは、それぞれの要件について見ていきましょう。
改正電子帳簿保存法では、請求書の電子保存におけるタイムスタンプの要件が緩和されました。
従来は、電子保存する全ての請求書にタイムスタンプが必要でしたが、改正後は以下の条件を満たす場合にはタイムスタンプが不要となりました。
以下の表に、タイムスタンプが不要なケースを整理しています。ぜひ参考にしてみてください。
保管の種類 |
タイムスタンプが不要なケース |
電子取引 |
請求書が電子データで授受される場合 |
スキャナ保存 |
紙の請求書をスキャンして電子データに変換する場合(一定の要件を満たす必要あり) |
電子計算機出力マイクロフィルム(COM) |
電子計算機で作成したデータをマイクロフィルムに出力する場合 |
ただし、これらの場合でも、電子データの「真実性(改ざんされていないこと)」と「可視性(いつでも内容を確認できること)」を確保する必要があるため気をつけましょう。
電子帳簿保存法では、請求書をはじめとする国税関係帳簿書類の保存期間は7年間と定められています。これは改正後も変更されていません。
電子データの場合も、紙媒体の場合と同様に、7年間保存する必要があります。
ただし、法人・個人で保管期間が異なりますのでご自分の期間をよく調べておきましょう。
形態 |
保管期間 |
法人 |
7年から10年程度 |
個人 |
5年から7年程度 |
電子帳簿保存法により、請求書をPDFで発行した場合は原則として電子データのまま保存しなければなりません。そのため、PDFを紙に印刷して保管することは認められていないのです。
2023年12月31日までは経過措置として、PDFを紙に印刷して保管することが認められています。
2024年1月からは、電子取引されたPDFは必ず電子データのままで保管しなければならないため注意しましょう。
今回の記事では、電子帳簿保存法とはどのような法律なのか、電子データを保管する際の注意点など幅広く説明しました。
電子帳簿保存法では、真実性の確保や可視性の確保など、守らなければならない要件があります。
これから請求書を発行する必要のある起業家や個人事業主の方は、必ず要件をチェックしてから保管するよう注意しましょう。
また、紙で取引した書類をスキャナ保存することもできますが、税務署への申請が必要など手間がかかるため、初めから電子取引することをおすすめします。取引先の都合もありますが、基本的には初めから電子取引するよう心がけましょう。