更新日:2024.05.13
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2020年に日本政府は「2050年までに脱炭素社会の実現を目指す」と宣言しています。それに伴い、現在多くの国内企業がCO2削減や脱炭素に向けて取り組みを進めています。
製造や輸送といった活動の中で「自社がどのくらいのCO2を排出しているのか」具体的な数値や情報を把握しておくのは、事業者として重要な役割です。そこで今回の記事では、CO2排出量の計算方法について詳しく解説します。「サプライチェーン排出量」「Scope」といった専門用語の意味もわかる内容になっているので、ぜひ最後までお読みください。
なぜ企業がCO2排出量の計算に取り組む必要があるのか、理由は以下の3つです。
それぞれ詳しく解説していきます。
日本には「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」と「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律(省エネ法)」という法律があり、排出量やエネルギーの使用状況などを国に報告しなければいけません。
「温対法」により、多量の温室効果ガスを排出する企業は、排出量を算定して国に報告する義務があります。また「省エネ法」では、一定基準を超えるエネルギーを使用する事業者を特定事業者とし、中長期計画の提出とともに、エネルギーの使用状況の報告が必要です。
企業の情報開⽰の⼀環として、排出量の情報は事業や業種・都道府県別などに集計され、サイトや報告書で公表されます。
顧客や投資家は、環境保全活動を企業の評価基準にしていることがあります。サイトや報告書などに自社が排出したCO2について掲載することで、環境対応企業としての立場を明確にできます。
例えばトヨタ自動車は、2035年までに世界の自社工場でCO2の排出を実質ゼロにする目標を発表しました。他にも三菱重工グループやSMBCグループといったさまざまな企業が、温室効果ガス削減に向けた取り組みを行っています。
このような公表はSDGsへの活動アピールとなり、多くの顧客や投資家・株主からの信頼獲得が期待でき、企業のイメージアップにも繋がるでしょう。
製造や物流・販売など、一連の流れで発生する温室効果ガス排出量のことを「サプライチェーン排出量」と言います。サプライチェーン排出量の全体像(総排出量や排出源ごとの排出割合)は、CO2排出量を算出することでわかります。
自社が「何のエネルギーをどのくらい排出しているのか」といった、詳細な数値や情報を計算した上で把握しておくことが重要です。CO2排出量を算定すれば、自社と他社のCO2排出量が明確になり、自社が優先的に削減すべき対象を特定できます。またサプライヤーであるメーカーに対し、環境負荷低減への活動を要請することで、他社と連携してCO2削減を進められるでしょう。
基本的なCO2排出量の計算方法は「活動量×排出係数(排出原単位)」となります。ここでは、CO2排出量を算出する上で欠かせない「活動量」と「排出係数(排出原単位)」について解説していきます。
活動量とは、電気の使用量や貨物の輸送量といった「事業活動中にどれだけのCO2を排出したか」を表した数値を表します。活動量の調べ方は、前年度に使用したエネルギーの種類、電気やガスといったエネルギー使用量の集計が必要です。毎月のエネルギーの使用量は、電気料金の請求書で確認できます。請求書が発行されていない場合、ポストに投函される口座引落の通知書や電力会社のサイトでチェックすることも可能です。
どうしてもわからなければ、年間のエネルギー使用量を契約している電力会社に確認してみましょう。具体的な数値は、社内の各種データや業界平均データから調べて算出します。例えば建設業の場合、各工事で使用するエネルギー別の量などを把握するため、サンプリング調査を行います。業界によって、必要となるエネルギーの種類や数値は異なるため注意しましょう。
排出係数(排出原単位)は「どれだけのCO2が排出されるか」を表した数値です。燃料の種類や輸送手段などによって、排出係数は異なります。例えば電気を1kWh使用した際に排出されるCO2の量や、ガソリン1L当たりに排出されるCO2の量などが該当します。
排出係数には「基礎排出係数」と「調整後排出係数」があります。「基礎排出係数」は、電力会社から供給した電気発電の場合、排出したCO2排出量を販売した電力量で割った値です。一方「調整後排出係数」は、再生可能エネルギーの利用や排出量削減を目的として出される数値となります。「基礎排出係数」に、電力会社による修正が加えられます。
基本的には環境省が公表するデータから「基礎排出係数」や「調整後排出係数」が確認できるでしょう。また、排出係数を直接計算する方法や取引先から算定結果の提供を受ける方法もあります。
CO2の排出量を計算する際は、サプライチェーン排出量の存在が欠かせません。サプライチェーン排出量とは、自社向上などで直接排出される温室効果ガスだけでなく、電気の利用や物流なども含んだ排出量の合計です。CO2の排出量を把握するには自社だけでなく、他社を含めた全体像を把握することが重要です。
サプライチェーン排出量は「Scope1の排出量+Scope2の排出量+Scope3の排出量」で算出されます。
Scopeは、CO2排出量の算定・報告の世界的な基準である「GHGプロトコル」によって規定され、事業活動全体のCO2排出量を算定します。自社と他社を区別し、段階的に進めていくことで「現在自社がどの位置にいるのか」がわかりやすくなります。
Scope1・2・3、それぞれの計算方法について確認しておきましょう。
Scope1は、自社での燃料燃焼や工業プロセスによって直接排出しているCO2のことです。
計算方法は「活動量×排出係数(排出原単位)」となります。
ここでの排出係数(排出原単位)は、電気(1kWh)使用当たりのCO2排出量などが該当します。石油や石炭などを化学的に加工する企業や、ガソリンといった燃料を燃やす車両を使っている企業などは、Scope1の量に気をつけましょう。
Scope2は、他社から供給された電気や熱といった間接的なCO2を指します。複数工場がある場合は、それぞれの場所での使用量を合算しましょう。
計算方法は「活動量×排出係数(排出原単位)」となります。
例えば電気であれば「電気使用量(1kWh)×電力会社ごとの排出係数」で算定します。環境省が公表する「電気事業者別排出係数一覧」から、自社が契約している電力会社の排出係数を確認しましょう。
Scope3は、Scope1と2以外の間接排出(自社事業の活動に関連する他社の排出)となります。製造や物流などの組織活動に伴う排出のことで、カテゴリが15に分類されるのが特徴的です。
例えば購入した製品やサービスであれば、原材料や消耗品の調達が排出活動になります。従業員の出張や通勤で排出されるCO2も含まれるため、細かい分類が必要です。
計算方法は「活動量×排出係数(カテゴリ別の排出原単位)」となります。
国土交通省や経済産業省が公表する「CO2排出量の計算ツール」を活用すると、エクセルで簡単に数値を算出できます。
サプライチェーン排出量に似たものとして、LCA(ライフサイクルアセスメント)があります。LCAとは、製品の資源採取から廃棄までの全過程(ライフサイクル)を、定期的に評価(アセスメント)する手法です。
全体を査定することで、どこで環境負荷が大きいのか、どこを対策すれば地球環境に優しいのか、といったことを見分けられます。LCAの計算方法は、ISO(国際標準化機構)の規格に従いましょう。
LCAの基本的な計算式は「=Σ(活動量×原単位)」となります。サプライチェーン排出量の計算方法と異なるため、注意が必要です。
CO2排出量の基本的な計算式は「活動量×排出係数(排出原単位)」です。正確なCO2排出量を把握する場合は自社と他社を区別し、製造や物流といった活動で排出されるCO2を分類して算出する必要があります。
数値を計算する場合、データの収集や算定に、時間や手間がかかるでしょう。そこで、弊社が提供する、CO2排出量計算(簡易シミュレーション)を活用してみてください。ガス、灯油、ガソリンなどの請求書や領収書をご準備いただき、自社の電気やガスの使用量についてチェックしてみましょう。