更新日:2024.11.28
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BPOは、自社の業務プロセスの一部、あるいは全部を外部の専門業者に委託することで、経営効率の向上やコスト削減を図る経営戦略です。
しかし、BPOと似た言葉に「アウトソーシング」があり、その違いを明確に理解していない方もいるかもしれません。アウトソーシングとBPOは、どちらも外部に業務を委託するという点では共通していますが、委託する業務範囲や期間、目的などが異なります。
本記事では、BPOの定義、アウトソーシングとの違い、導入するメリット・デメリット、そしてBPO導入を成功させるためのポイントなどをわかりやすく解説します。BPO導入を検討している企業担当者様にとって、有益な情報となるでしょう。
BPOとは「ビジネス・プロセス・アウトソーシング(Business Process Outsourcing)」の略で、簡単にいえば「企業の業務プロセスを外部の専門企業へ委託する経営手法」のことを指します。導入の主な目的は、業務の効率化・品質向上・コスト削減などです。ここからは、BPOの導入による効果や注目を集めている理由、対象となる業務の具体例など詳しく解説していきます。
BPOの導入によって期待できる主な効果は、コア業務にフォーカスした働き方が可能となる点です。
企業の業務は、コア業務とノンコア業務に分けられます。商談や予算管理、商品・販売企画などの自社の利益に直結する業務が「コア業務」、請求業務や備品の管理、経費精算などの企業の利益とは直結しない業務が「ノンコア業務」です。
豊富な人材が在籍し、自社のコア業務とノンコア業務を適切に振り分けられると理想的ですが、現実的には難しい企業も多いでしょう。ノンコア業務を限られた人材で担当する状態が続けば、コア業務に注力できず、企業の発展を妨げる恐れがあります。
BPOの導入によってノンコア業務を外部に委託し、業務の負担を大幅に削減できれば、自社のリソースをコア業務に当てられます。結果的に、人材コストの削減や業務効率の向上にもつながるでしょう。
BPOを始めとした経営戦略は、人手不足によって生じる業務上の問題解消につながる手法として注目されています。日本でBPOの需要が高まっている背景にあるのが、少子高齢化です。労働に従事できる現役世代の人材が少ないため、さまざまな業界・企業で人手不足が問題となっています。
BPOは人手不足により、ノンコア業務の負担が大きくなっている企業にこそ需要があるといえるでしょう。
BPOの対象となる業務は、情報システムに関連する業務を委託する「IT系BPO」と、それ以外の「非IT系BPO」に大きく分けられます。IT系BPOでは、主に情報システムを請け負い、非ITBPOでは幅広い業務を担当します。
IT系BPO |
● 社内向けマニュアルの製作 ● 社内ヘルプデスク ● 従業員の社用パソコンのデバイス管理 ● セキュリティ対策のサポート ● 社内システムのネットワーク監視、保守、運用 ● 新規システムの導入、移行のサポート ● システムのアップデート |
非IT系BPO |
● 人事(応募者の選考進捗の管理、採用計画の立案など) ● 法務(企業の法律に関する問題の相談、契約書のチェックなど) ● 総務・庶務(社内の問い合わせ対応、受付業務、備品・名刺の発注・管理、防災関連の対応、事務局のサポート、郵便物の発送・受け取りなど) ● 経理(支払い代行、伝票入力、請求書作成など) ● 営業マーケティング(営業戦略の立案、ディレクションなど) ● コールセンター(問い合わせ対応・アポイントの獲得など) |
企業によって依頼する内容が大きく異なるので、どのような業務に対応しているかは導入前に明確に把握しておくことが大切です。
BPOとアウトソーシングは、いずれも自社の業務を委託する経営手法ではありますが、大きく分けて2つの違いがあります。
ここからは、BPOとアウトソーシングの違いを、それぞれ分かりやすく解説します。また、はっきりと違いが明確になっていない方は、ぜひ以下を参考にしてください。
BPOとアウトソーシングは、どちらも自社の業務を外部企業に委託する経営手法ですが、対応する範囲が異なります。「外部からの調達」を意味するアウトソーシングは、自社に必要な人的資材やサービスを調達する方法です。自社の業務の一部を委託することで業務負担は減るものの、効率化や品質の向上は業務の範囲に含まれていません。
一方で、BPOは業務プロセスの見直しも含め、業務の全てを外部に委託する方法のことです。通常の業務に加えて、業務の効率化や効果の分析、ボトルネックの特定、改善案の実行なども委託できるため、該当業務の負担を軽減しつつ、業務品質の向上も目指せます。
BPOとアウトソーシングでは、委託期間にも違いがあります。アウトソーシングの委託期間は一時的なのに対し、BPOは継続的に委託されるのが一般的です 。アウトソーシングは「一時的な人材不足を補う方法」、BPOは「人材不足の解消と業務効率化を進めるため、継続的なサポートを受ける方法」と理解しておくと良いでしょう。
BPOを導入することで、企業の業務効率化を高めるとともに、さまざまな問題・課題の解決につながる可能性があります。BPOの導入によって得られる具体的なメリットは、以下の3つです。
それぞれの利点について、一つずつ確認していきましょう。
BPOを導入する1つ目のメリットは、業務上のミスを軽減できる点です。非コア業務であっても、専門の企業に請け負ってもらうことで、自社にはない知識・ノウハウを活用できます。また、適切な業務プロセスの構築によって、ミス自体の抑止にもつながるでしょう。
2つ目は、業務の効率化です。BPOを導入し、各業務の専門家に業務上の改善案策定や実行を委託することで、大幅な業務効率化につながる可能性があります。特に自社の課題を洗い出せていない企業や、リソース不足によって課題解決につながる改革案を実行できない企業にとっては、大きなメリットといえるでしょう。また、社内の慣習やしきたりが業務効率化を妨げている場合なども、外部の業者からの改善案として受け入れられやすいかもしれません。
最後に、人件費などのコスト削減につながることも、BPO導入の大きなメリットです。人材不足の度に採用活動を行い、研修などを実施して教育する場合、どうしても時間や人的なコストが発生します。長い目で見れば、BPOを導入してコストを一定に保った方が効率的といえるでしょう。
BPO対応で大切なのは、メリット・デメリットのどちらも理解した上で導入することです。BPOを導入するにあたっては、業務効率の向上やコストの大幅削減などのメリットだけでなく、以下のデメリットについても押さえておきましょう。
それぞれの問題について、自社の状況と照らし合わせながら確認していくことをおすすめします。
BPOの導入によるデメリットの一つは、業務の進捗状況の確認が難しい点です。BPOで外部の業者に業務を委託する場合、進捗状況や完了のめどを随時把握するのが難しくなる可能性があります。
従ってBPOの導入時は、スムーズに業務の進捗を確認できるよう、業者との間で報告の頻度・内容に関するルールを定めておくことをおすすめします。報告の正確性を高めるためにも、社内で利用しているツールなどを共有し、作業の進捗を可視化すると良いでしょう。
次に、BPOを委託するための準備が必要となる点もデメリットとして挙げられます。専門的な知識を持つ業者に業務を委託するとはいえ、ある程度の引き継ぎは必要になります。そのためBPOの導入を検討するときは、ある程度、時間などの余裕を持っておくことが大切です。独自の業務内容や手順がある場合は、打ち合わせ時に小まめに伝えたり、情報をまとめて渡したりするなどして準備しておきましょう。
最後に、再度の内製化が難しい可能性がある点もBPOのデメリットです。業務の委託を中断し、自社で対応することになったとしても、従来とは業務の内容が大きく変わっているかもしれません。その場合、業務の内容や手順を再度作り直す必要があります。
従ってBPOの導入後も、業務内容の進行手順について随時把握しておくことが大切です。また、自社の状況と照らし合わせ、適切な業務を委託しましょう。
今回の記事では、業務の効率化に最適なBPOの概要やアウトソーシングとの違い、メリット・デメリットなど詳しく解説しました。
BPOは、人手・資金不足などの課題を抱える企業の業務効率化につながる手法です。企業の業務プロセスを外部の専門企業へ委託するBPOは、アウトソーシングと比較すると継続的で、対応範囲も広いです。ただし、導入後は業務の進捗確認や再度の内製化が難しいといったデメリットがあることも押さえておく必要があります。
対応としては、業務の引き継ぎ期間や詳細な内容など、自社の課題を明確にしておくことが大切です。BPOを適切に導入し、従業員がコア業務に専念できる社内環境の整備を進め、自社の将来的な成長を目指しましょう。
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