更新日:2026.09.30

ー 目次 ー
インボイス制度と電子帳簿保存法は、どちらも請求書の実務に関係しますが、役割は異なります。
インボイス制度は、主に「仕入税額控除を受けるために、請求書へ何を記載し、何を保存するか」を定める消費税のルールです。
一方、電子帳簿保存法は、帳簿や取引関係書類を電子データで保存するときに、「どのような方法で保存するか」を定めています。
2つの制度が重なる代表例が、メール添付PDFやクラウドサービスなどで授受する「電子インボイス」です。適格請求書として必要な記載事項を満たすだけでなく、電子取引データとして電子帳簿保存法の保存要件も満たす必要があります。
一方、紙で受け取ったインボイスは紙のまま保存できます。「インボイスだからすべて電子保存」「電子帳簿保存法があるから紙の請求書もスキャン必須」というわけではありません。
この記事では、2026年時点のルールをもとに、インボイス制度と電子帳簿保存法の違い、電子インボイスの保存方法、紙・電子それぞれの実務対応を整理します。
インボイスの保存方法は、紙で授受したか、電子データで授受したかによって変わります。
| ケース | インボイス制度 | 電子帳簿保存法 | 基本対応 |
|---|---|---|---|
| メール添付PDFでインボイスを受領 | 仕入税額控除のため適格請求書等を保存 | 電子取引データ保存の対象 | PDF等を電子データのまま保存 |
| クラウド・Webでインボイスを受領 | 仕入税額控除のため保存 | 電子取引データ保存の対象 | ダウンロードまたはクラウド上で要件を満たして保存 |
| 電子インボイスを発行 | 提供した電磁的記録を保存 | 電子取引データ保存の対象 | 提供した電子データを保存 |
| 紙のインボイスを受領 | 仕入税額控除のため保存 | 電子取引ではない | 紙のまま保存可能 スキャナ保存も選択可 |
| 紙のインボイスを発行 | 写し等を保存 | 紙の交付自体は電子取引ではない | 紙の写し等を保存。作成データを保存する方法もある |
インボイス制度=請求書の内容・仕入税額控除、電子帳簿保存法=電子データの保存方法と分けて考えると整理しやすくなります。電子で授受したインボイスでは、両方のルールを確認します。
| 比較項目 | インボイス制度 | 電子帳簿保存法 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 消費税の仕入税額控除を適正に行う | 国税関係帳簿書類・電子取引データの保存方法を定める |
| 主な対象 | 適格請求書発行事業者、本則課税で仕入税額控除を受ける事業者など | 所得税・法人税等で帳簿・書類の保存義務がある事業者 |
| 中心となる論点 | 登録番号、税率、消費税額等の記載事項、帳簿・請求書等の保存 | 改ざん防止、見読可能性、検索機能など |
| 紙の請求書 | 要件を満たせば利用・保存可能 | 紙で授受した書類は紙保存できる。スキャナ保存は任意 |
| 電子の請求書 | 適格請求書の記載事項を電磁的記録で提供できる | 電子取引に該当する場合は電子データのまま保存する |
インボイス制度の正式名称は「適格請求書等保存方式」です。
本則課税で仕入税額控除を受ける買手は、原則として一定事項を記載した帳簿と、適格請求書等を保存します。
通常の適格請求書には、主に次の6つの事項が必要です。
適格請求書発行事業者の氏名または名称・登録番号
取引年月日
取引内容(軽減税率対象品目の場合はその旨)
税率ごとに区分して合計した対価の額と適用税率
税率ごとに区分した消費税額等
書類の交付を受ける事業者の氏名または名称
電子帳簿保存法には、大きく3つの保存区分があります。
| 保存区分 | 内容 | 電子保存 |
|---|---|---|
| 電子帳簿等保存 | 会計ソフト等で最初から電子的に作成した帳簿・書類をデータで保存する | 任意 |
| スキャナ保存 | 紙で受け取った・作成した請求書や領収書等をスキャンして保存する | 任意 |
| 電子取引データ保存 | メール、Web、クラウド、EDI等で電子的に授受した取引情報を保存する | 対象データは必要 |
電子インボイスをメールやクラウドサービス等で授受した場合は、電子取引データ保存の対象になります。
適格請求書発行事業者は、紙の適格請求書を交付する代わりに、その記載事項を電磁的記録で提供することもできます。
具体的には、次のような方法があります。
電子メールによるPDF等の提供
インターネット上のサイト・クラウドサービスを通じた提供
EDI等を利用した取引データの提供
電子インボイスは、インボイス制度上は仕入税額控除に必要な証憑であり、電子帳簿保存法上は電子取引データです。
そのため、買手は次の2点を確認します。
① インボイス制度:登録番号・税率・消費税額等の必要事項がそろっているか
② 電子帳簿保存法:電子取引データとして適切な方法で保存されているか
| 受け渡し方法 | 保存するもの | 注意点 |
|---|---|---|
| メール添付PDF | 添付されたPDF等 | 印刷物だけではなく、元の電子データを保存する |
| メール本文に取引情報を記載 | 取引情報を確認できるメールデータ等 | メール本文自体に取引情報が記載されている場合、本文も保存対象になる |
| Webサイトから取得 | ダウンロードしたデータ、または要件を満たすサイト上のデータ | 閲覧期限が短い場合は期限前に自社でダウンロードして保存する |
| クラウド請求サービス | サービス上のデータまたはダウンロードデータ | 法定保存期間中にいつでも閲覧・出力でき、電子帳簿保存法の要件を満たすことを確認する |
| EDI・Peppol等 | 授受した取引データ | 人が内容を確認できる形で表示・出力できる環境を確保する |
Webやクラウドで受け取るインボイスは、必ず毎回ダウンロードしなければならないわけではありません。法定保存期間中いつでもインボイスを確認・ダウンロードでき、電子帳簿保存法上の保存要件を満たしている場合は、サービス上で保存する方法も認められます。
電子取引で受け取ったインボイスを印刷し、社内の経理処理や確認用として紙で保管すること自体は禁止されていません。
ただし、印刷した紙を保存したからといって、元のPDF等を削除してよいわけではありません。
PDFを電子データとして保存 + 紙にも印刷 → 可
PDFを削除 + 印刷した紙だけ保存 → 原則不可
電子取引データについて、不当な訂正や削除を防止するための措置を講じます。
タイムスタンプは方法の一つですが、すべての電子インボイスにタイムスタンプが必須というわけではありません。
タイムスタンプが付されたデータを受領する
所定の期間内にタイムスタンプを付与する
訂正・削除履歴が残る、または訂正・削除できないシステムで授受・保存する
訂正・削除を防止する事務処理規程を定めて運用する
税務調査等で必要となった場合に、保存した電子インボイスをパソコン等の画面で明瞭に確認できる状態にしておきます。
必要に応じて速やかに書面へ出力できる環境も確保します。
電子取引データでは、原則として次の項目を検索条件として設定できるようにします。
取引年月日その他の日付
取引金額
取引先
専用システムを利用しなくても、規則的なファイル名や索引簿を利用して検索要件に対応できる場合があります。
ファイル名の例
20260831_110000_株式会社○○.pdf
なお、税務職員からの電子データのダウンロードの求めに応じられる場合は、範囲指定検索・組み合わせ検索が不要になります。
さらに、基準期間の売上高が5,000万円以下であるなど一定の条件を満たす事業者は、検索機能自体の確保が不要になる場合があります。
担当者個人のメールボックス、閲覧期限が短いWebサイト、退職者のPC、解約予定のクラウドサービスだけにデータを残していると、法定保存期間の途中で確認できなくなるおそれがあります。
サービス上で保存する場合は、法定保存期間中にいつでもデータを確認し、必要に応じて出力・ダウンロードできるかを確認してください。
本則課税で仕入税額控除を受ける買手は、原則として一定事項を記載した帳簿と適格請求書等を保存します。
売手から適格請求書の記載事項に係る電磁的記録の提供を受けた場合は、その電磁的記録を保存することで仕入税額控除の要件を満たします。
適格請求書発行事業者には、交付した適格請求書等の写し、または提供した適格請求書等に係る電磁的記録を保存する義務があります。
電子インボイスをメールやクラウド等で提供した場合は、提供した取引データを保存できる仕組みを整えておきましょう。
消費税法上、仕入税額控除のために保存する適格請求書等や、適格請求書発行事業者が保存する適格請求書の写し・電磁的記録は、原則として7年間保存します。
| 立場 | 保存対象 | 保存期間 |
|---|---|---|
| 買手 | 仕入税額控除のために保存する適格請求書等 | 原則7年間 |
| 売手 | 交付した適格請求書の写し・提供した電磁的記録 | 7年間 |
保存期間は、受領・交付等の日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日を基準に計算します。
法人税法や所得税法など、別の法律による保存義務もあるため、複数の保存義務が重なる場合は最も長い期間を満たすように管理すると分かりやすくなります。
紙で郵送・手渡しされた適格請求書は、電子取引データではありません。
そのため、電子帳簿保存法によって紙のインボイスを必ず電子データへ変換する必要はなく、紙のまま保存できます。
保管スペースを削減したい場合などは、電子帳簿保存法のスキャナ保存制度を利用して電子化することもできます。
ただし、その場合は解像度、カラー、入力期間、タイムスタンプまたは一定のシステムによる改ざん防止、検索機能など、スキャナ保存の要件を満たす必要があります。
1|請求書・領収書・納品書などを「紙で授受したか/電子で授受したか」に分ける
2|電子データは、メール・Web・クラウド・EDIなど取得経路ごとに保存先を決める
3|インボイスの登録番号・税率・消費税額等の記載事項を確認する
4|改ざん防止、見読可能性、検索要件への対応方法を決める
5|売手側の発行データ・買手側の受領データを法定保存期間中に取り出せる状態で管理する
インボイス制度と電子帳簿保存法を別々の業務として考えるよりも、「取引証憑を授受する → 内容を確認する → 保存する → 会計処理する」という一連のフローとして設計した方が、保存漏れや確認漏れを防ぎやすくなります。
必須ではありません。
タイムスタンプは電子取引データの改ざん防止措置の選択肢の一つです。
訂正・削除履歴が残るシステム、訂正・削除できないシステム、訂正削除防止に関する事務処理規程など、別の方法で要件を満たすこともできます。
原則として削除できません。
電子取引で授受したPDF等が保存対象であれば、元の電子データを電子帳簿保存法に従って保存します。
紙への印刷は補助的な保存・確認方法として利用できます。
いいえ。
紙で授受したインボイスは紙のまま保存できます。
任意でスキャナ保存する場合に、電子帳簿保存法のスキャナ保存要件を満たします。
関係する場合があります。
適格請求書発行事業者への登録と、電子帳簿保存法の電子取引データ保存は別の制度です。
インボイス登録をしていない個人事業主でも、所得税法等で保存義務のある取引情報を電子で授受している場合は、電子取引データ保存の対象になります。
はい。
保存義務のある取引情報を電子メール等で送付した場合は、送った側にとっても電子取引データとなります。
さらに、適格請求書発行事業者が電子インボイスを提供した場合は、インボイス制度上も提供した適格請求書に係る電磁的記録を保存する義務があります。
一定の条件を満たせば、毎月ダウンロードする必要がない場合があります。
法定保存期間中いつでも該当する電子インボイスを確認・ダウンロードでき、税務調査時の提示・出力や電子帳簿保存法の保存要件を満たしている場合は、クラウドや取引先のマイページ上で保存する方法も認められます。
一方、閲覧期限が短いサービスや、契約終了後にデータへアクセスできなくなるサービスでは、期限前に自社でデータを保存しておきましょう。
インボイス制度と電子帳簿保存法は別のルールです。
インボイス制度は、主に仕入税額控除を受けるための請求書等の記載事項・保存要件を定めています。一方、電子帳簿保存法は、帳簿や書類、電子取引データを電子的に保存する場合の方法を定めています。
電子インボイスをメール、Web、クラウド、EDI等で授受した場合は、両方の制度を確認します。
まず、適格請求書として登録番号、税率、消費税額等の必要事項がそろっているかを確認します。そのうえで、電子取引データとして改ざん防止、見読可能性、検索機能などの要件を満たした状態で保存します。
一方、紙で授受したインボイスは紙のまま保存できます。電子帳簿保存法があるからといって、紙の請求書を一律にスキャンする必要はありません。
最初に「紙で授受したか、電子で授受したか」を分け、次に「インボイスとして必要な内容」と「電子帳簿保存法上の保存方法」を確認する運用にすると、経理処理を整理しやすくなります。