更新日:2024.06.25
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飲食店の経営について調べると「厳しい」や「廃業」というワードを目にすることがあります。なぜマイナスな意見が多いのか気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。飲食店の経営は難しいと言われていますが、ポイントを押さえれば軌道に乗せることも可能です。
今回の記事では、個人の飲食店経営が難しいと言われる理由について詳しく解説します。経営を成功させるために知っておきたいコツや注意点も紹介しているので、飲食店経営を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
飲食店は継続率が低く、廃業が多い業種です。ここでは、個人の飲食店経営が難しいと言われる以下5つの理由を見ていきましょう。
飲食店は多額の初期費用・運営費用がかかるため、利益が出づらい業種です。飲食店経営が失敗する原因を把握しておくことで、対策しながら営業できるようになります。
飲食店を開業する際はテナント契約に加えて、内装・外装工事や店舗設備の購入などに費用がかかります。また初期費用に加えて、開業後の運営費用も高額になりがちです。家賃や水道光熱費はもちろん、食材の仕入費や従業員を雇う場合は人件費も発生します。
開業後すぐに売上が立ったとしても、初期費用が回収できるまで利益がでないケースがほとんどです。飲食店は黒字になるまでに時間がかかるケースが多いため、自己資金を開業資金で使い切ってしまうと運転資金がショートしてしまいます。
飲食店の利益率は10%前後が平均で、他業種に比べると低い水準です。また家賃や水道光熱費などの固定費が高いため、純利益が低くなってしまいます。特に近年は、仕入れ費や人件費も高騰している状況です。
さらに飲食店は、店舗の席数や顧客の滞在時間によって売上の最大値が決まるため、利益にも上限があります。「今月の赤字分を来月で取り返す」というような経営は難しく、一度業績不振になると立て直すのが困難です。
日々新しい飲食店が増えているため、ライバルは数多く存在します。ライバルのいない好立地を見つけても、すぐに新しい飲食店が開業するケースは少なくありません。ライバルに勝つためには、価格面やサービス面で競合優位性を確保することが不可欠です。しかし薄利多売の価格設定にすると、思うように利益が出ず赤字が続くリスクもあります。
飲食店を経営するためには調理スキルだけでなく、マーケティングや会計など幅広い知識が求められます。顧客は料理・サービスの質や価格などを競合店舗と比較したうえで、行くお店を選んでいます。マーケティングの知識が少ないと顧客に自店を認知してもらえず、そもそも競合店舗との比較対象にもなりません。
また飲食店を続けるためには、安定した利益が不可欠です。コスト削減や節税対策は会計の知識が必要になり、分からないまま開業しても経営が上手くいかず廃業のリスクが高まります。
飲食業界は一般的に給与が低く、長時間労働に陥りやすいイメージを持たれています。募集しても応募が集まらず、慢性的な人手不足に悩む飲食店は多いです。その一方で人材を採用するために給与水準を上げると利益は下がり、今度は資金繰りが難しくなります。
しかし新たな人材を採用せずにそのままにしておくと店が回らなくなり、通常営業できなくなるケースもあります。必要な人件費を確保できるように、他の部分でコストを削減することが大切です。
飲食店の経営は難しいと言われていますが、以下4つのポイントを押さえることで軌道に乗りやすくなります。
飲食店は料理と接客の質が高ければ、必ず経営が安定するとは言い切れません。新規顧客を増やすためにはマーケティングに注力し、自店の存在を認知してもらう必要があります。また定期的に競合店舗の分析を行い、競合優位性を確保することも重要です。
お店のコンセプトは競合店舗と差別化を図り、顧客にアピールするために不可欠です。コンセプトが曖昧だと適した利用シーンが分からず、顧客に選ばれにくくなります。お店のコンセプトは経営の成功を左右する重要な要素なので、しっかり検討することが重要です。
具体的には、飲食店のコンセプトになるアイデアを「5W2H」という手法を用いて見つけましょう。5W2Hは以下の頭文字を取った言葉で、項目をすべて埋めるとお店のイメージが具体化されます。
When(いつ) |
営業時間・定休日 |
Where(どこで) |
立地(オフィス街・住宅街など) |
Who(誰に) |
性別・年齢層・職業など |
What(何を) |
メニュー・サービスの特徴 |
Why(なぜ) |
飲食店を開業する理由 |
How much(いくらで) |
メニューの価格 |
How(どのように) |
飲食店の雰囲気・料理の提供方法など |
5W2Hを埋める際は特に譲れないポイントを決めておくと、経営方針にブレが生じにくくなります。
さまざまな飲食店が存在するなかで、自店を選んでもらうためにはまず顧客に認知してもらう必要があります。飲食業界でもマーケティングの重要性は高まっており、現代ではSNSの活用が最も有効な手段です。店内や料理の画像・動画をSNSに投稿することで、自店の魅力を発信できます。
従来の宣伝方法よりも、低コストで多くのユーザーにアピールすることが可能です。ただしSNSによってユーザー層や特徴が異なるため、ターゲットに合ったものを選択しましょう。
ライバルが多いなかで生き残るためには、競合店舗の分析を行うことが重要です。店舗の内観・外観やメニューなど、分析すべき箇所は多くあります。繁盛している飲食店の良い点を研究し、自店に取り入れないか検討しましょう。
競合店舗から学べるポイントは多いので、定期的に足を運ぶことをおすすめします。時代によって顧客のニーズは変化するため、競合店舗がどのように対応しているのか把握することが大切です。顧客ニーズを満たせないと、売上減少につながる可能性が高まります。
飲食店を経営する際は、お金に関する知識を身につけたうえで流れをしっかり把握することが重要です。知識がないまま開業すると、資金繰りに困るリスクが高まります。また自店のキャッシュフローを把握していないと、繁盛しているにも関わらずキャッシュが足りないという事態に陥る可能性があります。
ただしお金に関する知識を身につけ、会計管理まで1人で行うのは簡単なことではありません。個人で飲食店を経営する場合、会計業務だけでなく従業員の育成や新メニューの考案など、やるべきことはたくさんあります。会計に関する知識が少なかったり、リソースが足りなかったりする場合は経理を雇うのも有効です。
飲食店を経営する際は、以下3つの注意点も押さえておく必要があります。
小規模・少人数経営の飲食店だからこそ避けられない問題も存在します。対応策を考えられるようになるため、注意点をしっかり把握しておきましょう。
店舗規模が小さくなればなるほど、席数が減るため売上の最大値も下がってしまいます。特に飲食店は単価が低く、利益率は10%前後であるケースが多いです。薄利多売になりがちで、売上を大きく伸ばすのは非常に困難と言えます。
限られた席数のなかで売上を増やすためには、客単価や回転率を上げる工夫が不可欠です。具体的には、期間限定・季節限定のメニューやお店の看板メニューを作る方法があります。
少人数で経営している飲食店は、病気や怪我によって従業員が離脱すると営業に大きな影響を及ぼします。特にオーナーが店舗に出れない場合は、臨時休業せざるおえないケースが多いです。飲食店は営業の日数や時間で売上が左右されるため、休業した分がそのまま損失につながってしまいます。
また休業日が続くと、売上だけでなくリピーターや遠方からの来店者を失うリスクが高まります。常に病気や怪我に備えて、業務を維持できる体制を作って飲食店を経営することが大切です。
インボイス制度の導入により、適格請求書を売り手(飲食店)に交付してもらうことで買い手(顧客)は仕入税額控除を受けられるようになりました。しかし適格請求書の発行を認められているのは、適格請求書発行事業者のみです。接待や会食など法人が顧客として来店することが多い場合、適格請求書を発行できないと顧客離れのリスクが高まります。
経費として計上する飲食代の消費税は、仕入税額控除の対象になるためです。適格請求書発行事業者でない飲食店で会計した場合、仕入税額控除を受けられず顧客の税負担が大きくなります。適格請求書を発行できる飲食店に顧客が流れてしまう可能性があるため、専門家への相談なども行ったうえでインボイス制度に対応するか検討しましょう。
適格請求書を発行するためには、適格請求書発行事業者になる必要があります。ここでは、以下2つのケース別に、飲食店がインボイス制度に対応する方法を見ていきましょう。
インボイス制度は義務ではないため、対応しないのも1つの選択肢です。ただし自店が接待や会食などで多く利用される場合は、インボイス制度に対応しないと集客に悪影響を及ぼす可能性があります。自店の経営状況を把握したうえで、インボイス制度に対応するか検討することが大切です。
課税事業者の場合は適格請求書発行事業者の登録申請書を作成し、税務署に提出する必要があります。税務署に行くのが負担になる場合は、Webで申請できるe-Taxの利用がおすすめです。審査を経て適格請求書発行事業者に登録されると、適格請求書に記載する番号が発行されます。
インボイス制度の登録申請から登録番号の発行までにかかる期間は、e-Taxで約1ヶ月、書面で約1.5ヶ月が目安です。登録申請書に記入漏れや記入ミスがあると、さらに時間がかかってしまうため注意しましょう。また適格請求書発行事業者の登録以外にも、インボイス制度に対応したレジや会計システムを導入する必要があります。
適格請求書は記載すべき項目が決まっており、不備があると無効になるためです。インボイス制度では複数税率に対応することから、経理業務が煩雑になることも予想されます。現在使用しているレジや会計システムがインボイス制度に対応していない場合は、内容の確認・修正などで業務負担が増えてしまいます。
そのため、適格請求書発行事業者の登録番号が発行されるまでに、レジや会計システムを更新しておきましょう。
適格請求書発行事業者になるためには、課税事業者であることが条件です。免税事業者の場合は税務署に消費税課税事業者選択届出書を提出し、課税事業者になる必要があります。その後の手続きは、課税事業者と変わりません。
ただし、2023年10月1日〜2029年9月30日の間に登録する場合は、消費税課税事業者選択届出書を提出せずに適格請求書発行事業者に登録された日から課税事業者になることができます。
参照:令和5年7月 国税庁|インボイス制度において事業者が注意すべき事例集
飲食店は初期費用・運営費用が多くかかるうえ、利益を増やすのが難しい業種です。経営が難しいと言われていますが、お店のコンセプトを明確にしたりマーケティングに注力したりすることで軌道に乗る可能性は高まります。
また接待や会食など法人の利用が多い飲食店では、インボイス制度に対応していないと顧客離れにつながるリスクがあります。その一方で複数税率を扱うことから経理業務の手間が増えるため、インボイス制度に対応するべきか専門家に相談しながら検討していきましょう。