更新日:2024.06.25
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飲食店の経営は難易度が高く、開業しても数年以内に廃業してしまうケースがあります。飲食店の経営は、料理が美味しいだけでは成功しません。厳しい競争のなかで「成功するためには何の知識が必要なのか」知りたい方は多いのではないでしょうか。
そこで今回の記事では、飲食店経営に必要な4つの知識について詳しく解説します。開業に必要な資格や欠かせないスキルが理解できる内容になっているので、飲食店の経営を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
飲食店を経営するためには、大きく分けて以下4つの知識が必要になります。
知識が不足している状態で飲食店を開業しても、経営がうまくいかないリスクが高いです。ここでは、飲食店経営に必要な知識を詳しく見ていきましょう。
競争が激化している飲食業界のなかで生き残るためには、単に売上を増やすという考え方だけでは困難です。売上が増えたとしても、支出が多ければ利益は出ないからです。飲食店は毎月の固定費が多くかかる分、「どのように経費を減らすか」が非常に重要なポイントになります
また限られた経営資源を効果的に分配し、事業を維持・成長させていくことが重要です。ただし売上を増やすために広告宣伝費や人件費をかけすぎると、資金繰りがうまくいかなくなる可能性があります。一度資金ショートが起きると立て直すのは難しいため、経営の知識を身につけることが重要です。
近年繁盛している飲食店はマーケティングに注力しているケースが多く、SNSやホームページなどを活用しています。インターネットを活用したマーケティングは、広告やチラシといった従来の方法よりも低コストで多くの人に宣伝できるのが特徴です。
顧客は料理・サービスの質や価格などを比較して、利用する飲食店を選んでいます。しかし、そもそも顧客に認知してもらわなければ比較対象にもなりません。効率的に自店の存在を認知してもらったり魅力を伝えたりするためには、マーケティングの知識が不可欠です。
飲食店経営に関連する法律は数多くありますが、なかでも食品衛生法が最も重要です。飲食店を開業する際は保健所に届出を提出し、営業許可を得る必要があります。食品衛生法は、国民の健康を守るために食品の安全性を確保するのが目的です。
また午前0時〜午前6時に主にお酒を提供する業態で飲食店を経営する場合は、風営法などに基づいて深夜酒類提供飲食店営業の届出が必要になります。
届出の提出や申請を行わないまま営業すると、行政処分や懲役・罰金が科される可能性があります。人を雇うときは労働基準法や労災保険法などの知識も必要になるため、1人で対応するのが難しい場合は専門家に相談するのも有効です。
飲食店の経理は確定申告だけでなく、売上管理やコスト削減などにも必要な業務です。具体的には、以下のような知識が求められます。
インボイス制度とは、売り手が買い手に正確な適用税率や消費税額などを伝えるためのルールです。買い手(顧客)は売り手(飲食店)にインボイス(適格請求書)を発行してもらうことで、仕入税額控除を受けられるようになります。法人の顧客が多い場合は、インボイスを発行できないと顧客離れにつながるリスクが高まります。
ただしインボイス制度の導入にはメリット・デメリットがあるので、専門家に相談したうえで対応するかどうか検討することが大切です。ご自身の判断が経営に影響を及ぼすケースは多くあるため、会計に関する知識を身につけておきましょう。
飲食店を開業する際は知識を身につけることに加えて、以下2つの資格を取得する必要があります。
いずれも講習を受けることで、簡単に取得できます。ここでは、飲食店開業に必要な資格を詳しく見ていきましょう。
食品衛生責任者とは、食品衛生法に基づいて飲食店舗の衛生管理を行う人を指します。自治体によって規定は異なりますが、規模に関わらず1店舗に1人は食品衛生責任者の配置が義務付けられています。
ただし以下のような資格を持っている方は講習が免除となり、保健所の窓口に申請するだけで食品衛生責任者の取得が可能です。
該当する資格を持っていない場合は、食品衛生責任者養成講習を受ける必要があります。会場集合型とeラーニング型の2種類があるので、受講しやすい方法を選択しましょう。また食品衛生責任者養成講習は、受講資格として以下の制限が設けられています。
受講費は自治体によって多少異なりますが、1万円程度が相場です。全国共通の資格なので、取得した都道府県とは異なる場所で飲食店を開業することも認められています。
防火管理者とは多数の人が利用する建物において、火災などによる被害の防止を目的に消防計画を作成する人のことです。また消防計画に基づいて、対象となる建物を適切に管理します。収容人数が30名以上の飲食店を開業する場合は、防火管理者の資格を取得しなければなりません。なお収容人数は店舗の席数だけではなく、従業員も換算されるため注意が必要です。
防火管理者は「乙種」と「甲種」の2種類に分けられ、飲食店の延べ面積によって受講する講習が異なります。乙種は延べ面積300平方メートル以上の飲食店が対象で、2日で約10時間の受講が必要です。一方で甲種は延べ面積300平方メートル未満の飲食店が対象となり、1日約5時間の受講で資格を取得できます。日本防火・防災協会で講習を申し込む場合、受講料は甲種が8,000円、乙種が7,000円となります。
飲食店の開業に必須ではありませんが、以下2つの資格を持っていると顧客にアピールできます。
上記の資格を取得することで飲食に関する知識が深まり、さらに質の高い接客が可能となります。ここでは、飲食店経営で役立つ資格を詳しく見ていきましょう。
調理師免許を取得することで食に関する専門的な知識が身につくだけでなく、社会的信用も得られるのがメリットです。調理師試験では、公衆衛生学や食品学など幅広い分野の問題が出題されます。いずれも、料理を提供するうえで重要となる知識です。
調理師免許を取得するためには、国が指定している調理師養成施設を卒業するか、2年以上(週4日かつ1日6時間以上勤務)の実務経験を積んだ後に調理師試験に合格する方法があります。調理師免許を有していると一定の技術や知識があることの証明になるので、顧客に安心感を与えられる資格です。
ソムリエとは、料理や顧客の好みに合わせたワインを提供したり、最適な状態を保つために管理したりする専門家です。日本では、日本ソムリエ協会と全日本ソムリエ連盟が認定試験を実施しています。日本ソムリエ協会で資格を取得する場合は、20歳以上で通算3年以上のアルコール飲料に関する業務に従事していることが条件となります。
一方で全日本ソムリエ連盟の場合は、20歳以上であれば実務経験がなくても受験可能です。ソムリエは国家資格ではないものの、取得することでサービスや信頼度の向上につながります。またブランディングにも有効なので、高級レストランやワインバルを開業する場合は必要性が高くなります。
飲食店を経営する際は、さまざまなスキルが求められます。なかでも特に欠かせないスキルは、以下の4つです。
1つのスキルが特化していても飲食店で成功するのは難しいため、バランスよく身につける必要があります。ここでは、飲食店経営に欠かせないスキルを詳しく見ていきましょう。
飲食店は質の高い料理やドリンクを提供すれば、必ずしも成功するわけではありません。接客も重要なポイントで、顧客とコミュニケーションがうまく取れないとリピーターを増やすのは困難です。また複数人で営業している飲食店であれば、従業員同士のコミュニケーションも必要になります。
従業員同士がうまく連携できないと、お店が円滑に回らなくなってしまうからです。そのため飲食店経営において、コミュニケーションスキルは必須となります。
当然ではありますが飲食店を繁盛させるためには、美味しい料理を提供することが重要です。調理スキルはご自身だけでお店を営業する場合はもちろん、従業員に料理の作り方を教えるときにも必要になります。作り手によって同じメニューでも味は大きく変わるので、誰が作っても質に差が出ないようにすることが重要です。
またメニューを開発する能力も、飲食店の経営を続けるためには不可欠です。顧客ニーズは日々変化しており、時代に合わせて新しいメニューを考案することで顧客離れを防げるようになります。魅力的なメニューは集客につながるので、競合店舗も参考にしながら開発しましょう。
飲食店を運営する人は、一般企業における管理職と同様の立場です。働きやすい職場環境を構築し、業務が円滑に進むようにするためにはチームマネジメントのスキルが求められます。従業員と積極的にコミュニケーションを取り、チームを引っ張っていくことが大切です。
また店舗全体の生産性を向上させるためには、従業員の成長が欠かせません。信頼関係を構築することで従業員のエンゲージメントが向上し、効率的に成長を促せるようになります。
飲食店を経営するうえで、慎重に判断するのは悪いことではありません。しかし判断に時間をかけすぎると、最適なタイミングを逃してしまう可能性も考えられます。
特に資金調達やクレーム対応は、迅速な判断と行動が不可欠です。対応に時間がかかると、資金がショートしたり顧客を失ったりするリスクが高まります。そのため飲食店を経営する際はご自身の知識を活かして決断し、自信をもって行動に移すことが非常に重要です。
飲食店を経営するためには、マーケティングや法律など幅広い知識が求められます。本やセミナーなどで必要な知識を身につけることもできますが、不足している部分は専門家に頼るのも有効です。特にマーケティング手法は消費者行動に合わせて日々変化しており、効果を出すためには最新の情報を把握したうえで柔軟に対応しなければなりません。
また2023年10月より導入されたインボイス制度は、飲食店にも影響があります。顧客離れや取引先からの価格交渉につながる可能性が考えられるので、専門家に相談したうえで対応するか検討することが大切です。