更新日:2024.11.29
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2027年に、従来のリース会計基準から新リース会計基準に変わります。従来の区分や会計処理から変更されるため、自社にどのような影響があるか気になる方もいるでしょう。
この記事では、新リース会計基準の基礎情報や変更点について解説します。
ここでは新リース会計基準の概要を、以下3つのポイントに沿って解説します。
新リース会計基準の基礎情報や日本でいつから適用されるのかが気になる方は、参考にしてください。
新リース会計基準とは、国際的なリース会計基準となる国際財務報告基準(以下IFRS)と整合性を図るために日本で適用される、新しい会計基準です。この基準では、リース取引を借手のバランスシートに記載することが求められ、リース取引に伴う資産と負債を財務諸表に明確に反映できます。
以下は、新リース会計基準の変更点となる対象範囲の一例です。
新基準の適用により、企業の財務諸表がより透明性の高いものとなるため、投資家や金融機関が企業の財務状況を適切に評価しやすくなります。
そもそもリース取引とは、企業会計基準委員会(以下ASBJ)が公開しているリース会計基準において、以下のように定義されています。
"「リース取引」とは、特定の物件の所有者たる貸手(レッサー)が、当該物件の借手(レッシー)に対し、合意された期間(以下「リース期間」という。)にわたりこれを使用収益する権利を与え、借手は、合意された使用料(以下「リース料」という。)を貸手に支払う取引をいう。"
(引用:ASBJ 企業会計基準委員会「ASBJ 企業会計基準第13号 リース取引に関する会計基準」)
つまり、不動産や自動車などの資産をリース会社から借りて使用する取引のことを、リース取引といいます。一方、リース会計基準とは、リース取引で発生した会計を処理するための基準です。
従来の会計基準では、リース取引は2種類に分類され、企業が抱えるリース負債が財務諸表に正確に反映されないことが課題でした。しかし、新基準の適用により、原則としてすべてのリース契約がバランスシートに記載されるようになります。
これにより、企業が抱える負債の全体像がより透明化される反面、多くの企業が財務管理の方法を見直す必要があります。
新リース会計基準は、2024年9月13日にASBJより公表され、2027年4月1日以降に開始する事業年度から適用されます。なお、2025年4月1日以降に始まる年度からの早期適用も認められています。この基準は、IFRSとの整合性を図るために導入されるものです。
主な対象企業は、上場企業をはじめとする会計監査対象会社に適用されます。とはいえ、中小企業も「中小企業の会計に関する指針」に従って対応する必要があり、早めの準備が大切です。
新基準の適用に向けて、財務諸表への影響を把握することや社内体制の整備が必要となります。従業員の教育などにも影響すると考えられるため、専門家に相談しながらスムーズな移行を目指しましょう。
新リース会計基準の主な変更点をASBJより公表された正式な基準をもとに、以下3つのポイントに沿って解説します。
それぞれ解説します。
従来のリース会計基準では、リース取引が「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」の2つに区分されており、それぞれ異なる会計処理が必要でした。
ファイナンス・リースは売買取引に準じた処理(オンバランス)が求められる一方、オペレーティング・リースは賃貸借取引として処理(オフバランス)されていました。
新リース会計基準の適用後は、2つの区分は従来のままですが、基本はオンバランスで処理されるようになります。そのため、会計処理が以下のように変更されます。
現行のリース会計基準における一般的な会計処理は、以下のとおりです。
ファイナンス・リース |
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オペレーティング・リース |
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一方、2027年4月1日以降開始する事業年度から適用される新リース会計基準の会計処理では、原則として以下のように行われます。
新リース会計基準 |
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つまり、従来のファイナンス・リースの会計処理と同様の手順で処理するということです。
現行基準では、リース契約で定められた契約期間がリース期間となります。
新基準では、リース契約により使用権を有する期間をリース期間として扱います。また、以下のようなオプションが契約に含まれる場合、リース期間の判定には特に注意しましょう。
契約に延長オプションがある場合 |
合理的に確実に行使する期間 |
契約に解約オプションがある場合 |
合理的に確実に行使しない期間 |
さらに、解約可能なリース契約でも実際には解約しないことが確実な場合は、その期間もリース期間に含まれるため、注意が必要です。
新リース会計基準は、原資産の追加に伴うリース料の増加が独立価格(市場相場に基づく適正価格)と整合的な場合、その追加部分は独立したリースとして扱われます。この場合、追加部分は新たなリース契約として独立して会計処理を行いましょう。
リースの範囲が縮小される場合(リースの一部または全部の解約)は、以下の処理が必要となります。
このように、負債と資産の修正及びその差額の処理が必要です。
従来のリース会計基準はオペレーティングリースの場合、リース料を支払った時点で費用として計上するだけで済んでいました。リース取引に基づく負債が財務諸表に反映されないため、財務状態が良く見えるという点が大きな特徴でした。
しかし、新基準では原則としてすべてのリース取引がオンバランス処理となり、リース資産とリース負債を貸借対照表に計上することが求められます。
これにより、企業の財務状況がより実態に即して表示される一方で、会計処理の負担が増加し、自己資本比率が低下する可能性も懸念されています。特に、航空業界や物流業界のようにリース取引を多用する業界では、この影響がより顕著となる見込みです。
従来の基準と比較すると変化は明確であり、早期の体制整備が重要となります。
本記事では、2027年4月1日以降開始する事業年度から適用される新リース会計基準について、基本的な考え方と現行基準からの主な変更点を解説しました。
新リース会計基準は、基本的なリース取引はオンバランスとして会計処理を行うため、一見すると事務処理が簡単になるように感じるでしょう。しかし、経理担当の負担や財務諸表の負債などが増加する恐れがあるため、多くの企業が影響を受ける可能性があります。
早いうちから切り替えの準備を進め、業務を円滑に進められるようにしておきましょう。