更新日:2024.11.29
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リース資産は、企業の設備投資やコスト管理において重要な役割を持っています。そのため、減価償却が可能かどうかが気になる方もいるでしょう。
本記事では、リース資産が減価償却できるか解説します。減価償却の計算方法や仕訳方法といった実務に役立つポイントも紹介するので、参考にしてください。
「リース資産」とは、リース取引によって得た資産のことをいいます。「リース取引」は、固定資産の貸主が借主に代わって資産を取得し、資産を貸し出す取引のことです。
リース取引は、リース資産となる不動産や情報通信機器など、高額なものをリース会社に購入してもらいます。その代わり、リース料を定期的に負担することで、リース取引が成立します。
似ている取引に「レンタル」がありますが、リースのように継続的なコストがかかるわけではありません。リース取引とレンタルは別物であると把握しておきましょう。
減価償却とは、減価償却資産の購入費用を法定耐用年数の間、少しずつ経費として計上していく会計処理のことです。つまり、建物や機械などの時間が経つにつれて価値が減っていく資産の購入費用を、その資産の寿命で分割して少しずつ経費計上していくという意味になります。
減価償却は、高額な資産を一度に経費とすることで発生するキャッシュフローの悪化を防ぐために活用される場合が多いです。
個人事業主は法律で定められた方法で必ず減価償却を行わなければなりませんが、法人の場合は柔軟に対応が可能です。つまり、法人は経営状況に応じて、減価償却のタイミングや金額を調整できる特徴があります。
リース取引は「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」の2種類に分けられます。
ファイナンスリース |
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オペレーティングリース |
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リース取引には複数の形態があり、それぞれ減価償却の会計処理方法が異なります。以下、それぞれのリース取引における減価償却のルールを具体的に確認しましょう。
参考:国税庁「No.5702 リース取引についての取扱いの概要(平成20年4月1日以後契約分)」
ファイナンス・リース取引は中途解約ができないリース取引で、借手が保険料や諸費用などのすべてを負担するため、実質的に購入に近い形態です。そのため、減価償却の対象となります。
ファイナンス・リース取引は「所有権移転ファイナンス・リース取引」と「所有権移転外ファイナンス・リース取引」の2種類に分けられます。それぞれ特徴が異なるため、自社が所有しているリース資産がどちらに該当するか確認しておきましょう。
所有権移転ファイナンス・リース取引とは、リース期間の終了後、借手に所有権が移転すると考えられる取引や同等の効果があると考えられるファイナンス・リース取引のことです。下記3点のいずれかに該当する場合は所有権移転ファイナンス・リース取引に該当します。
取引名 |
概要 |
譲渡条件付リース取引 |
リース期間の終了、もしくは契約途中での解約時に、リース資産の所有権が借手に移転する取引。 |
割安購入選択権付リース取引 |
リース期間が終了、もしくは中途で終了する際に、リース資産を通常よりも大幅に安く購入できる権利がある取引。また、この購入価格が極めて有利に設定され、借手による買取りが確実に行われると予測される取引。 |
特別仕様物件のリース取引 |
借手の要望に合わせて作られたもので、借手しか使わないリース資産であり、貸手が第三者に再リースまたは売却することが困難な取引。 |
所有権移転外ファイナンス・リース取引とは、所有権が移転しないタイプのファイナンス・リースのことです。リース期間が短く、リース期間終了時に所有権が移転しない取引などが該当します。
所有権が借手に移転しないため、リース期間終了後もリース資産を使用したい場合は、再度契約してリース料を払い続けなければなりません。
オペレーティング・リース取引は、ファイナンス・リース取引以外の取引を指します。なぜ減価償却できないかというと、途中解約ができ、費用もファイナンス・リース取引に比べ負担が少ないことから、固定資産にならないと判断されるためです。
ただし、以下の場合は例外的にファイナンス・リース取引と判定され、減価償却できる場合もあります。
一見オペレーティング・リースに見える契約でも、実質的な取引内容によってはファイナンス・リースとして扱われ、減価償却が認められる可能性があります。リース取引がどのような形態になっているか慎重に確認しましょう。
リース資産の減価償却方法を解説します。計算方法と仕訳方法について具体例を用いて解説するので、参考にしてください。
リース資産の減価償却費は、対象となる資産の取得価額と償却率をもとに計算します。「リース期間定額法」と「定率法」があり、それぞれの計算式は以下のとおりです。
リース期間定額法 |
取得価額 × 償却率 = 減価償却費 |
定率法 |
未償却残高 × 償却率 = 減価償却費 |
どちらの計算方法を活用しても問題ないですが、一般的にはリース期間定額法が用いられます。所有権移転ファイナンス・リース取引と所有権移転外ファイナンス・リース取引それぞれの、リース期間定額法を使った具体的な計算例を紹介します。
リース資産として500万円の電気設備を所有権移転ファイナンス・リース取引で契約した場合を考えてみましょう。法定耐用年数が15年の場合、償却率は13.3%のため以下のような計算式になります。
【年間減価償却費の計算例】
500万円 × 13.3%(0.133)= 665,000円
この計算で求めた665,000円が、15年間にわたって毎年計上する減価償却費です。
所有権移転ファイナンス・リース取引は、リース期間が終われば所有権が借手に移ります。期間終了後も有形償却資産として、耐用年数を基準に減価償却を行いましょう。
所有権移転外ファイナンス・リース取引の計算方法は、所有権移転ファイナンス・リース取引と基本的には同様です。ただし、リース期間終了時には資産を返却することになるため、リース期間内で償却を完了させます。そのため、取得価額と償却率から計算した減価償却費を、リース期間にわたって均等に計上することになります。
リース資産を減価償却した際は、直接控除法と間接控除法のどちらかで仕訳する必要があります。
直接控除法は、減価償却費を固定資産から直接差し引く方法です。間接控除法は、減価償却費を累計額として記録します。
以下は、それぞれの仕訳方法です。
直接控除法 |
<借方>減価償却費 |
<貸方>リース資産 |
|
間接控除法 |
<借方>減価償却費 |
<貸方>リース資産減価償却累計額 |
ここでは、所有権移転ファイナンス・リース取引と所有権移転外ファイナンス・リース取引に分けて仕訳方法を解説します。仕訳例は、前述の計算方法で挙げた500万円の電気設備をもとに行います。
所有権移転ファイナンス・リース取引の仕訳例は以下のとおりです。
【直接控除法の仕訳例】
<借方>減価償却費 665,000円
<貸方>リース資産 665,000円
【間接控除法の仕訳例】
<借方>減価償却費 665,000円
<貸方>リース資産減価償却累計額 665,000円
所有権移転外ファイナンス・リース取引の仕訳は、計算方法と同様に所有権移転ファイナンス・リースと同じ仕訳を行います。
ただし、所有権移転外ファイナンス・リース取引は、リース料の費用を計上可能です。リース料の仕訳例は以下のように行います。
【リース料の仕訳例】
<借方>支払リース料 50,000円
<貸方>現金預金 50,000円
※上記の金額は例示です。実際の取引では該当する金額に置き換えてください。
本記事ではリース資産の減価償却について、基本的な考え方や計算方法、仕訳方法などを解説しました。
リース資産は、取引内容によって減価償却の可否が決定します。特に減価償却費の計算や仕訳を間違えると、正しい損益の計算ができなくなってしまうため、正確な処理が求められます。
日々の取引を丁寧に記録しておくと、万が一の計算ミスや仕訳の誤りが発生しても速やかに対処できるでしょう。